胃炎とは
胃の粘膜に炎症が起きた状態を胃炎と言います。
胃炎には、食べ過ぎ、飲みすぎ、過度なストレス、喫煙などが原因の急性胃炎、ピロリ菌感染などが原因の慢性胃炎などの種類があります。ピロリ菌感染が原因の場合、治療をせずにそのまま放置すると胃・十二指腸潰瘍、胃がんを起こす恐れがあります。
胃炎は、胃の粘膜に炎症があり、病理診断で組織に炎症があると診断された状態を言います。
したがって、胃がムカムカする、胃が重たいといった自覚症状から診断されるものは症候性胃炎と言います。
胃の症状があれば「胃炎」というように一括りにされていましたが、最近ではピロリ菌感染からの胃炎と機能性ディスペプシアなど胃の機能低下で起こる胃の症状と区別されるようになりました。
胃炎の症状
1.急性胃炎
- 胃痛
- みぞおち周辺の痛み
- 吐き気
- 胸焼け
- 腹部の不快感
- 膨満感
- 下血
など
2.慢性胃炎(萎縮性胃炎)
- 胃痛
- 胃がムカムカする
- 胃が重い
- 吐き気
- 胸焼け
- 腹部の張り
- 食欲不振
など
胃炎は無症状のケースもありますが、以上のような症状が目立つ場合は、早めに当院にご相談ください。
胃炎の原因
1.急性胃炎
飲酒・喫煙・刺激物
飲みすぎ、食べ過ぎ、香辛料などの刺激物の摂取が原因で炎症を起こします。
日常的に飲酒や喫煙している場合も、胃液の過剰分泌によって胃の粘膜で炎症が起きます。
過度なストレス
ストレスを過度に受けると、自律神経が乱れ、胃酸分泌が過剰になり、胃の粘膜で炎症が起きやすくなります。
3.萎縮性胃炎
慢性胃炎の長期化
慢性胃炎が長期にわたり継続すると、炎症によって胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎になります。
病状が進行すると、胃の粘膜が腸の粘膜のように薄くなる腸上皮化生が起こります。
この腸上皮化生の一部が胃がん化するとされているため、注意が必要です。
胃炎の種類
1.急性胃炎
主に食べ過ぎ、飲みすぎ、刺激物の摂取によって急激に胃の粘膜に炎症が起こるのを急性胃炎と言います。
胃痛などの症状が2~3日続いた後に治ります。
2.慢性胃炎
慢性胃炎のおよそ80%がピロリ菌感染によるもので、胃炎が慢性化した状態を言います。
主な症状は、胃もたれ・胃痛・吐き気・胸焼けなどで、そのまま放置しておくと胃潰瘍に進行してしまう場合があります。
胃の粘膜が弱っているので、治療に時間がかかるケースが見られます。
3.萎縮性胃炎
慢性胃炎が長引いて、胃の粘膜が薄く脆弱になった状態を萎縮性胃炎と言います。
そのまま放っておくことで治療に時間がかかり、胃がんに進行してしまう場合があります。
4.神経性胃炎
胃酸が過剰に分泌されて引き起こる胃炎で、胃痛や胸焼け、のどのつかえ感などの症状が現れます。
主な原因は、過度なストレス及び疲労によって、自律神経が乱れることです。
萎縮性胃炎が胃がんへ進行する流れ
慢性胃炎が長期化し、胃の粘膜が萎縮して萎縮性胃炎にまで進行し、さらに病状が進行すると、腸上皮化生と言って、胃の粘膜が大腸や小腸の粘膜に似た症状になります。
この腸上皮化生の一部ががん化し、胃がんを発症させる恐れがあります。
このように、萎縮性胃炎は、前がん病変として捉えられ、胃がん予防のためにも慢性胃炎の早期発見・早期治療が必須となります。
胃炎の検査方法
問診などで、患者さんの現在の症状を詳しくお伺いします。
服用中のお薬や、摂取した食べ物や飲み物などについてお聞きしていきます。
慢性胃炎の疑いがある場合は、胃カメラ検査(内視鏡検査)を行い、胃の粘膜の状態を観察していきます。
胃の粘膜に萎縮がある場合、そこから胃がんが発症する可能性があるため、しっかりと検査を行い、早期に治療を行うことが大切です。
当院では、日本消化器内視鏡学会専門医による、精密な胃カメラ検査(内視鏡検査)を行い、的確な診断と適切な治療を受けることができます。
胃炎の治療方法
胃炎の治療方法には、薬物療法・ピロリ菌の除菌治療・生活習慣の改善の3つがあります。
具体的には、以下の通りです。
1.薬物療法
胃酸分泌を抑える薬、胃の粘膜を保護する薬など、患者さんの症状に応じて処方しています。
市販薬で改善する場合がありますが、胃がんの場合でも同じ症状があるなど、薬物療法を行う際は、専門医師による検査と適切な治療を受けることをおすすめします。
2.ピロリ菌の除菌治療
胃カメラ検査(内視鏡検査)によって慢性胃炎と診断され、検査でピロリ菌がいると判断された場合、除菌治療を行います。除菌は抗菌薬と胃酸分泌を抑える胃薬を1日2回、7日間服用します。
3.生活習慣の改善
過食・過飲を防ぎ、またコーヒーや香辛料などの刺激物の摂取を控え、飲酒・喫煙を避けます。
これまでの生活習慣を改善することで、つらい症状を改善していきます。
再発予防にも生活習慣の改善は重要です。
除菌治療後、ピロリ菌に再感染するリスク
ピロリ菌感染の多くは、免疫力が弱く、胃酸分泌が十分行えない2~5歳の幼児期に起こるとされています。
幼年期に上下水道などの環境が整っていなかった世代に感染している人が多く、65歳以上の感染率は80%とも言われています。また、乳幼児期に親族から口を介して感染している場合もあります。昨今の日本では、衛生環境が整い感染率は低下傾向にあり、20~30代の感染率は約10~20%、10代では5~10%程度と言われています。
ピロリ菌は、一度除菌すれば日常生活での再感染は極めて低いとされています。
一方で、ピロリ菌に一度でも感染したことがある方は、除菌を行っても胃がん発症リスクがゼロにはならないため、感染歴のある方は定期的に胃カメラ検査を行うことをおすすめしています。