逆流性食道炎とは
逆流性食道炎の症状は多岐にわたり、胸焼けや胃痛をはじめ、心窩部痛、酸逆流症状、呑酸、胃もたれ、ゲップ、のどの違和感などが挙げられます。
当院では、逆流性食道炎の患者さんに、苦痛の少ない胃カメラ検査を行い、診断および治療を専門的に実施しています。
胃のピロリ菌感染によって萎縮性胃炎が進行すると胃酸分泌が低下します。
逆に、ピロリ菌がいない元気な胃でも、胃酸過多の症状が現れる場合があります。
最近は、ピロリ菌感染が減って胃酸過多の方が増えています。
胃酸によって胃が荒れ、このときに胃カメラでは胃炎の症状として見られますが、この過剰な胃酸が食道に逆流するのを逆流性食道炎と言います。
逆流性食道炎の診断には、その「症状」と「胃カメラでの見た目」の2つによって判断されます。
ただ、逆流性食道炎は、症状と胃カメラでの見た目が必ずしも一致するわけではないとされています。
「症状」に対しては、胃酸を抑制する薬が有効ですが、「見た目」はあるけれど、「症状」がない場合もあります。
この場合、炎症が前がん病変を引き起こす可能性があるともされているため、内視鏡での評価とともに定期的な経過観察をしていくことが大切です。
逆流性食道炎の原因
原因はさまざまですが、原因を特定することで治療および再発予防につながります。
また、生活習慣改善のためにも原因を知ることは大切です。
1.下部食道括約筋の機能低下
食道と胃の間にある下部食道括約筋は、普段食道を閉じて胃液の逆流を防いでいます。
これが機能低下することで、胃液の逆流が起こりやすく、逆流性食道炎を発症します。
2.蠕動運動の低下
食べたものを運ぶのは、消化管全体の蠕動運動です。
逆流が起きても正常な状態であれば、蠕動運動で解消されますが、蠕動運動機能が低下してしまうと逆流したものが胃へ戻らずに消化管に炎症を起こします。
3.脂肪分やたんぱく質の多い食習慣・食べ過ぎ
脂肪分が多い食習慣がある場合、下部食道括約筋機能を緩める酵素(コレシストキニン)を分泌し、逆流性食道炎の発症リスクを高めます。
また、消化に時間がかかるために、逆流が起こる回数が増えるのも原因となります。
加えて、食べ過ぎる傾向がある場合、胃全体が過度に伸長し、逆流を起こしやすい状態になります。
4.腹圧がかかる
前かがみの姿勢や猫背、ベルトなどの締め付け、重い物を持ち上げるなど、腹圧をかけることで、胃が圧迫され逆流が起こります。
5.加齢による機能低下
加齢によって下部食道括約筋の機能が低下したり、蠕動運動の機能が低下したりすることで逆流を起こします。
また、加齢によって唾液量の減少も原因の場合があります。
6.薬の副作用
心臓や血圧、喘息の薬には、下部食道括約筋を緩める副作用がある場合があります。
持病のお薬を服用中の方が逆流性食道炎の症状が現れたら、副作用が原因の場合があるためお薬手帳を持参のうえご相談ください。
また、ピロリ菌除菌治療の際には、一時的に逆流性食道炎の症状が出る場合がありますが、ほとんどのケースが一時的で自然に収まるので心配ありません。
しかし、逆流の症状がつらいときは遠慮なく当院にご相談ください。
逆流性食道炎の検査と治療方法
1.検査方法
問診にて、患者さんの症状について詳しく伺ったあと、確定診断するためには内視鏡検査が必須です。
逆流性食道炎の状態を詳しく観察でき、食道裂孔ヘルニアの有無も調べられます。
食道がんとの識別にはバリウム検査が有効ですが、確定診断のためにはやはり内視鏡検査を受ける必要があります。
当院では、苦痛を緩和し楽に受けられる胃内視鏡検査を実施しています。安心してご相談ください。
2.治療方法
これまでの生活習慣を改善しながら、患者さんの状態や症状に合わせて薬物療法を行い、症状緩和と再発防止を進めていきます。具体的には下記の薬剤を組み合わせて内服することで相乗効果を引き出していきます。
薬物療法
PPI | プロトンポンプの働きを抑制し胃酸分泌を抑えます。 再発防止にも有効です。 |
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H2ブロッカー | 胃酸分泌に欠かせないヒスタミンH2受容体への刺激をブロックします。 |
消化管運動機能改善剤 | 消化管や蠕動運動機能を改善し、消化を助けます。 食べ物の胃滞留時間を短くします。 |
制酸薬 | 胃酸を中和して、逆流しても炎症を軽減させます。 |
粘膜保護薬 | 胃酸から守るバリア機能を持たない食道の粘膜を保護し、炎症を改善します。 |
再発を防ぐために
逆流性食道炎は、症状が軽いうちは生活習慣を改善しただけでつらい症状がなくなる場合があります。
症状緩和とともに再発防止にも有効なので、積極的に取り入れてみてください。
1.食生活
脂肪分の多い食事やたんぱく質を控えます。また、食べ過ぎにも注意します。
唐辛子などの香辛料、カフェイン、酸味の強い物、甘いもの、消化の悪い物などは控えます。
胃酸分泌を促す食品を控えます。
2.飲酒と喫煙
飲酒と喫煙は逆流性食道炎を悪化させます。
禁煙するか本数を減らします。
また、アルコール摂取も控えながら楽しんでください。
アルコールは食道下部括約筋を緩めるので、寝る前の飲酒は避けてください。
3.睡眠
逆流を起こさないために、食後は2時間以上経ってから就寝してください。ある程度消化が進んでから横になります。
逆流が起きないよう、クッションなどで上半身を少し高めにすることもおすすめしています。